2007年06月18日 07:40
東京・丸の内「日本創生ビレッジ」5月7日スタート(ベンチャー企業/五十嵐)
■都心にビジネス・インキュベーター開設
ベンチャー関連の最新の話題の一つに、
東京の丸の内に「日本創世ヴィレッジ」という
ビジネス・インキュベータのスタートがあります。
5月7日、東京駅正面に「新丸ビル」が竣工しました。
新丸ビルは歴史あるオフィスビルで、
ここにベンチャー育成を目的とする
ビジネス・インキュベータを作るということは、
大変なチャレンジです。
ここで、インキュベータというのは、
「孵卵器」だとか「揺籃器」を意味し、
卵を孵すという意味です。
ですから、ビジネス・インキュベータとは、
ビジネスの卵を孵し育てる所を意味します。
シリコンバレーにもビジネス・インキュベータはあります。
しかし、本来的には地方において、
地域産業の活性化や、地域における雇用創造を目的として
創設されることが多いのです。
新丸ビルの例では、
都心でインキュベータを始めるという、
従来とは対極のコンセプトだと言えるでしょう。
ですから、本当に象徴的な出来事と表現しても過言ではありません。
実は私は5年前、コンセプティングの段階から
お手伝いしております。
なぜ、三菱地所が、
このようなプランを企画したのかの背景を
お伝えするころが、本日の主眼です。
日本各地に「ビジネス・インキュベータ」という看板を掲げた
建物はたくさん建設されておりますので、
何かの参考にしていただければ幸いです。
■三菱地所が抱える一抹の不安
東京の丸の内は、東証一部上場企業をはじめ、
エスタブリッシュメント企業の本社や本部が
多数集積しているところです。
日本最高のオフィス街と言えるでしょう。
ところが、三菱地所には、一抹の不安がありました。
というのも、「企業の寿命30年説」が喧伝されるように、
会社や産業にも栄枯盛衰があって、
優れた会社がいつまでも優れた会社であり続けるとは限りません。
産業、あるいは企業の衰退と共に、
「丸の内」のイメージが地盤沈下してしまうと
丸の内の大家さんである三菱地所は
非常に困るわけです。
これが彼らの持っていた不安の正体です。
それでは、不安を解消するにはどうすれば良いか?
ここが、今回の企画の出発点です。
これを解決するための方策として、
丸の内を世界で最もインタラクションが活発な街、
あるいは、イノベーティブな活動が盛んに行われている街
つまり新陳代謝が活発で新しいものが次々と生まれてくる街
というイメージを醸成し、
権威はあるが古くてお堅い街というイメージを払拭したかったのです。
一言で言えば、「日本のシリコンバレー」というような
イメージと築きたかったのです。
これは、シリコンバレーの対極に近いイメージを持つ東京・丸の内に
どのようにすればシリコンバレーを作れるかという
挑戦でもありました。
■丸の内にシリコンバレーを作りたい
丸の内は、どちらかと言えば
アメリカ東海岸のニューヨークに近い印象を受けます。
以前にお話しした事ですが、
シリコンバレーでは雇用の流動化進んでおり、
すぐに転職できる一面もある一方で、
すぐに職場を移ってしまう文化の中で、
いかに地域としての求心力を作るのかといった事が、
課題として挙げられます。
自由であればあるほど
求心力を作るのが困難になるわけですが、
求心力がなければ、
ふわふわしたものになってしまい、
その中で、集中して新しいものを生み出す
という状況ではなくなってきます。
ですから、このような自由な空間の中で
イノベーションを実現する土台として、
コミュニティが必要となってくるのです。
コミュニティには、
学校や家族の繋がりもありますし、
会社仲間ということもあります。
このような多様なコミュニティが、
多層化すると同時にコミュニティ相互間で直接的、間接的に
インタラクションが起こっていることが、
シリコンバレーのシリコンバレーたる所以です。
コミュニティのなかでの、
効率とイノベーションについて考えていくと、
いろんなバランスが必要になってきます。
「生物の進化」を例にとって考えてみましょう。
ダーウィンの進化論をベースに考えると、
種としての多様性が高い方が生き残れると考え勝ちですが、
実は、外部環境が一定で安定していれば、
多様性が少ない方が
無駄なく効率的なわけですから、
安定的な環境には
多様性が小さい方が良いのです。
しかし、突然、外部環境に急激な変化が起こる場合には、
どのような変化が起こるか不確定ですので、
多様性がなければ対応できません。
多様性と効率を微妙にバランスさせなければいけないことが
理解できます。
イノベーションというのは
革新を起こすことですから、
多様性の中から生まれてくると言えるでしょう。
その一方で、維持するためには
ある程度変化をしない部分も必要となります。
よく、ベンチャーが効率的に誕生する環境を
生態系と捉えて、「ベンチャーハビタット」と表現されますが、
シリコンバレーとは、まさに、理想的な「ベンチャーハビタット」なのです。
ですから、このような環境を
いかに丸の内で作り込むかがポイントとなります。
コミュニティとしての機能を活発化させるため、
丸の内で考えたとことは述べると、
街の性格上、シリコンバレーのように定住型で食住接近を
前提とするのは無理です。
そこで、可能な限り一つに場所、この場合、新丸ビルとなりますが、
優秀な人達を何時間かそこに滞在してもらい、人々の出会いの密度を人為的に
濃くすることで、人と人との出会いの場と多くの接点を作ることにより、
コミュニティ・ネットワークを作ろうとするものです。
■シリコンバレーと福岡の接点。
ところで話を脱線させて、福岡について述べると
福岡では、職場と住まいが近いことが多いですので、
いかにやる気を持つ多様性を持った人達を、
福岡に引き付けられるかがポイントになってくると思います。
シリコンバレーと福岡と共通する点は、
他の地域と比較しても、まず住環境が優れていることが指摘できます。
シリコンバレーの魅力の一つは、外に出るといつも真っ青な青空、
これが一番の魅力という人も大勢います。
しかも、教育水準も高いす、治安もいい。
ですからそこに住んで嬉しいという人達が、
地域に集まってきます。
■東京21世紀クラブ
さて、話を東京にもどし、コミュニティを築き
ネットワークとして機能させるために
新たな組織も作りました。
丸の内には、
大企業は沢山あり、企業内のコミュニケーションは盛んですが、
企業をまたいだ横方向のコミュニケーションは密ではありません。
そこで「新丸ビル」では、
個人の資格でなければ参加できないクラブを組織化しました。
その名も「東京21世紀クラブ」です。
会社単位では全く入れない。
あくまでも個人の資格でしか入れない。
しかし、個人というだけではなく、
シリコンバレー同様、
何らかのコミュニティに所属していることを条件としました。
コミュニティに所属していながら、
そのコミュニティに対して貢献していくような
インタラクティブな人材を集めるのが目的です。
このクラブが上手く機能しました。
このクラブのネットワークを通じて推薦されたベンチャー企業を
丸の内の三菱地所の持っている「空きオフィス」に低価格で
入居させる試みが試行的に行われました。
この入居企業の中から、何社かの株式公開企業が出てきました。
インキュベータみたいな建物は、
全くなかったわけですが、上手く行きました。
そこで、新丸ビルが竣工する際に、
「東京21cクラブ」に隣接させる形で、インキュベートスペースを作って
より効率的にしようと考えたことが、
日本創世ヴィレッジのコンセプトなのです。
このようにコミュニティが最初の前提として、
かつ先行して作られたビジネス・インキュベータは国内では先例がなく
是非とも、地域のビジネス・インキュベータでも参考にしていただきたいと
考えております。