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2007年10月29日 08:00

NPO法人九州大学こころとそだちの相談室 1周年(2) (臨床心理学・教育経営学/増田)

今回は、現代社会で生じている
臨床心理学的な問題についてお話します。


■学校における臨床心理学的問題
まず、現在の学校で生じている
最も深刻な問題は、いじめの問題だと思います。
いじめの問題については、学校の先生方も
様々な取り組みをされています。
中学校へは、スクールカウンセラーが派遣されています。
中学校の先生方は、スクールカウンセラーが
どのような仕事をしていて、
子ども達にとってどのような役割を果たしているのか
ということを、よく理解してくださっています。
しかし、小学校の先生方は、
スクールカウンセラーの仕事について、
あまりご存じでないようです。


最近では、小学校にも、
スクールカウンセラーを派遣して欲しいという
要望が強くなっています。
残念ながら、一部を除いて、
まだその実現には至っておりません。
しかし、小学校の先生方でも
スクールカウンセラーに相談をしたいとか、
子どもの様子を見て欲しいということであれば、
各中学校に派遣されているスクールカウンセラーに
連絡をとることは可能です。
あるいは、ご自分の学級のお子さんのことについて、
スクールカウンセラーに相談したいという場合も、
小学校の校長先生・教頭先生が
連絡を取ってくださると思います。
どのような些細なことでも、
早め早めに相談されるのがいいでしょう。


■大人社会における臨床心理学的問題
大人の社会でも
臨床心理学的な問題が生じていますが、
その本質は、あまり子どもの社会と変わらない
のではないかと思います。
逆にいえば、子どもの問題は
大人の社会の反映であるともいえます。
特に、忙しくてストレスがたまり、
悩みを抱えているが誰にも相談できず、
そのまま仕事に追われて
どんどん走っていってしまう方が多いと思います。
そうすると、ある日、
突然動けなくなることもあるでしょうし、
夜眠れない、それから気分が沈んで
なかなか意欲的になれないこともあるでしょう。
悩みを抱えた方々にとって、一番心配なことは、
自分のメンタルな面での問題を、
勤めている会社の職場の人間に知られると、
様々な点で不利益を被るのではないか
という不安です。


自分への評価を気にして、
相談に行けないことにより、
状態がますますひどくなるケースもある
と思います。
社会全体が、メンタルな病気に関して、
そして個人の1人1人の心の状態に関して、
もう少し鋭敏になる必要があります。
誰でも、風邪をひいたら、
クリニックや病院に行ったり、薬を買ったりします。
しかし、心の調子が悪いときに、
すぐに相談機関へ行ったり、
病院へ行ったりすることは、
まだ少ないのが現状でしょう。
この背景の1つは、日本の中にカウンセリング文化、
つまり、カウンセリングを受けると
気持ちが少し楽になるとか、
カウンセリングを受けることによって
自分の生き方が変わるという文化が、
まだまだ定着していないためだろうと思います。


こうしたカウンセリング文化は、
外国では定着しています。
例えば、アメリカでは、
学校にスクールカウンセラーもいれば、
ソーシャルワーカーもセラピストもいます。
また、カウンセリングを受けることも、
一般的になりつつあります。
自分を管理するために、専門家に依頼するという
契約社会の考え方に由来するのでしょう。
お金を支払って、
自分のメンタルな面に関するアドバイスを得たり、
相談をするということが、文化として根づいています。


日本の場合は、お金を支払ってまで、
自分の悩みを相談する必要があるとは
考えられていません。
しかし、地域社会のことを顧みると、
気楽に相談を持ちかけることのできる
相手が少なくなっています。
誰かに話を聞いてもらうだけで、
気持ちが少し楽になることを
カタルシス効果と呼ぶのですが、
その機会を得ることが困難になっています。


自分の悩みを相談して、
気持ちを落ち着けたり、
悩みを改善するためだけでなく、
自分が今後、どのように生きていけばよいかという
問題を扱う開発的な相談・カウンセリングもあります。
このように、自分の生き方を探っていくためにも、
臨床心理士は非常に役に立つと思います。


■臨床心理士の養成と「社会人学び直しプログラム」
現在、全国には約1万6,700人の臨床心理士がいて、
病院や学校など、様々な機関で活躍しています。
まだまだ数が不足しているため、
より多くの優れた臨床心理士を養成していく
必要があるでしょう。
しかし、もう1つの問題は、
臨床心理士をご存じでない方々が
大勢いらっしゃるということです。
「臨床心理士です」というと、
どのような職なのかよく理解してもらえませんが、
「カウンセラーです」というと、
仕事の内容を理解してもらえるのが現状です。
臨床心理士の有資格者は、
相応の専門的な研修や研究の経験を
積んでいますので、
様々な面で柔軟な対応が可能です。
この点について、
もっと広く理解していただければと思っています。


現在、対人援助職(臨床心理士、教師など)
に就いている社会人で臨床心理学を
勉強し直してみたいという方向けの
教育プログラムがありますので、
紹介しておきます。
平成19年度から、文部科学省の委託事業
「社会人学び直しニーズ対応推進プログラム」
が開始されました。
その中で、
九州大学の実践臨床心理学専攻では、
対人援助職の専門性を高めるための
スキルアッププログラムを立ち上げています。
本年度は、臨床心理士、
ならびに学校の先生を対象として、
発達障がいをテーマに4回ほど研修会を開催します。
来年度以降は、臨床心理士、学校の先生、
それから看護師、社会福祉士といった、
対人援助職の方向けのプログラムを
4コース設けて、1年間のプログラムを
組みたいと考えています。
来年度のプログラムは、
平成20年3月末に広報予定です。


プログラムの申込先は以下の通りです。
〒814-0002 福岡市東区箱崎6丁目19-1
九州大学人間環境学研究院
実践臨床心理学専攻内
社会人学び直しプログラム事務局
(担当) 岩山真理子
e-mail:manabpde@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp
FAX専用 092-642-3588
申込み締め切りは、
11月10日の土曜日です。

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