2007年10月12日 08:00
医療改革 - 日本の健康保険 (財務戦略/村藤)
今回は、
先週に引き続き、医療改革の話をします。
まずは私たちにとって気になる健康保険の話です。
■健康保険の現状
健康保険の中で特に問題なのは、
政管健保(せいかんけんぽ:政府管掌健康保険)です。
これは中小企業の
従業員や家族が入っている健康保険のことで、
大企業は独自に健康保険組合を作っていますが
これとは別になります。
現在の政官健保は黒字ですが、
2011年度には最悪8千億円の赤字になる
可能性があると厚生労働省は言っています。
そのため、厚生労働省は、
2008年度からの政管健保に対する
国庫負担を削減し、その分の負担を
大企業の健康保険組合や共済に
肩代わりさせようとしています。
中小企業の従業員に
これ以上の負担は耐えられそうにないので
大企業や国の健康保険からとろうという発想です。
もちろん、大企業の健康保険組合では、
突然振ってきた話に驚いて大きく反発しています。
■医療費削減策としての健康診断義務化
健康保険は、高齢化が進む中で
このまま運営していけるのかという問題に対して、
厚生労働省はいくつかの対策を打っています。
まずは、中長期的な医療費削減のために、
病気になる前の予防を行うことにしました。
糖尿病など生活習慣病の
発症自体を減らすために、40歳以上の
全員が健康診断を受けるよう義務付けて、
保健指導で生活習慣の改善を促そうというわけです。
ところが、1回の健康診断では、
1人あたり数千円の費用がかかりますので、
費用負担も馬鹿になりません。
また、本当に医師の言うことをみんなが聞くでしょうか。
例えばメタボリックの場合、先生に言われたからといって、
ビールをやめたり、食事の量を少なくしたりするでしょうか。
現状では、費用の増えることは確実ですが、
本当に効果があるのかどうかに若干の疑惑があります。
■医療制度改革 – 広告規制緩和
その他に、医療制度改革という
サービスの改善や効率化の中で
一体何が起こっているのかをお話します。
昔から弁護士や医者が広告をするのは
下品だという雰囲気があり、広告を出しても
住所や医者の名前くらいの情報しか出せませんでした。
「これが得意だ」といった広告は認められていなかったのですが、
厚生労働省はこの規制を緩和し、
患者の平均待ち時間や病院施設の写真などの
広告を認めるガイドラインを作成しました。
もちろん、「うちの手術は絶対安全」や
「うちは日本一の病院です」といった広告は禁止されています。
ただしホームページは対象外です。
実際にはホームページ上でいろいろな事が起こっています。
詳細な医療情報が掲載されたり、
病院が取り入れている先端医療が掲載されたりしています。
私たちはそれを見て病院の得意なものを知って、
病院を選択するときの参考にしていますよね。
進んでいる病院では、医療ミスの情報開示まで始めています。
ただ、ホームページは厚生労働省も規制するのは難しいため、
先ほどのガイドラインは、
ホームページ外での広告に適用されることになっています。
■医療制度改革 – 電子化・IT化
そしてもう1つ、
改革と効率化で進んでいるのは、電子化やIT化です。
特に診療報酬明細書(レセプト)。
レセプトとは、病院が健康保険に
医療費を請求するときに出す書類ですが、
韓国などでは全てオンラインになっています。
韓国はレセプトの9割以上をオンライン処理に移行し、
医療費削減に大きな効果を上げました。
一方、日本では
レセプトのオンライン化は2006年10月時点で
18.5%と遅れています。
そのため、日本でもオンライン化を進めようと、
2010年3月末までに8割をオンラインにし、
2011年3月末までには全面移行する予定でした。
ところが、小さい病院から
間に合わないという文句もあり、
現在では、小規模な医療機関は
2013年3月まで2年ほど猶予されることになっています。
■医療における「人不足」の問題
今、医師や看護師の人不足が
特に大きな問題となっています。
昔は、離島や山間部、過疎の地帯に
医師がいないという話でしたが、
最近は地方都市でも医師が不足し、
小児科、産婦人科、麻酔科の医師は、
日本中どこに行ってもいないという
大変なことになってきています。
そもそも日本では
人口1000人に対して医師は2人しかいません。
これはOECD加盟国30ヶ国中の27番という少なさです。
以前、1973年に1県に1つは
医科大学を作ろうという構想ができ、
1981年までに実現しました。
そのときは、
医師が過剰になるのではないかと
懸念の声もありましたが、
その後、高齢化に伴い患者の数が増え、
医師の数はまた不足しはじめたわけです。
■これからの改革の方向性
今までは
厚生労働省と1部の医療界出身者が、
中医協(中央社会保健医療審議会)での
改革の主導権を握っていました。
この結果、医療に株式会社の参入は
許さないとか混合診療は駄目だとか、
民間企業から考えると、
理解できないことを言っていたのです。
私は、厚生労働省や中医協の中に、
メンバーとして普通の人を入れるべきだと思います。
混合診療とは、
保健医療と自由診療が混在しているものですが、
これを一緒にすると保健医療の分まで
自由診療となり、高い値段を払うことになっています。
改善しようという動きがないわけではありませんが、
ほとんど機能していません。
日本の健康保険にも
良いところはないわけではありません。
日本では国民みんなが健康保険に入っています。
アメリカでは、医療保険に未加入の人は5,000万人で、
4分の1の人は医療保険に入っていません。
民主党のヒラリーは、全員加入の医療制度を作ろうと言い、
ブッシュはそんな制度は不要で
自分で自分の分を貯めればいいと言って、
闘いが起きていますね。そういう点では、
日本は既に全員加入になっており、
病気なのに病院にかかれないということは稀です。
ただ、全員加入は良いのですが、
このまま高齢化が進めば健康保険は
破綻しそうなので、株式会社の医療参入や
民間保険会社の健康保険参入も
認めるべきだと思います。
我々の体に関わることなので問題を解決して
継続可能な制度にしてもらわないと心配ですね。
なんとか問題を解決する方向に
向かっていくことを期待しています。