BBIQモーニングビジネススクール > 武田薬品の研究所移転にみる“人材の多様性”の価値 (産学連携/高田)

2006年11月30日 08:20

武田薬品の研究所移転にみる“人材の多様性”の価値 (産学連携/高田)

武田薬品工業が、
1000人規模の自社研究所を、
発祥の地である大阪から
神奈川県藤沢市に移転すると決めたことが
大きなニュースになりました。
今回はこのお話をしていきたいと思います。


■ 武田が藤沢市への移転を決めた理由

武田が移転計画を表明してから、
大阪府内の“彩都”と藤沢市との間で
激しい誘致合戦が繰り広げられました。
新聞の報道によると、
大阪は200億円、藤沢は80億円の補助金を
それぞれ提示したようです。


結局、武田は藤沢市への移転を決めましたが、
それには2つの理由があるようです。
一つは、藤沢市の移転先は自社工場跡地なので、
土地代が不要だということです。
もう一つの理由、こちらのほうが圧倒的に重要なのですが、
“多様な人材を獲得しやすい”ということです。
つまり、グローバルな競争を強いられている日本の製薬企業が、
欧米のメガファーマと呼ばれる巨大製薬企業と互角に戦ってゆくには、
多様で優秀な人材を擁していけるかがカギになってくるのです。


■ グローバルな競争下にある製薬業界

武田の研究開発費は年間1000億円に上りますが、
世界最大手のファイザーの研究開発費は何と8000億円。
武田が大阪・筑波・米国サンディエゴの
3ヶ所で研究開発を行っているのに対し、
ファイザーは世界中に8ヶ所
(北米6ヶ所、イギリス1ヶ所、日本1ヶ所)の研究開発拠点を置き、
グローバルな視点で研究開発を行っています。


この競争に勝ち残るためには、
研究開発人材の多様化による創造性の発揮が不可欠と考え、
武田は住み慣れた大阪を離れる決心をしたのです。


■ 一箇所に長居することの不都合

同じ地域に長く居つづけると、
必然的に地元大学とのつながりが強くなります。
関係者に聞いた話では、武田の大阪研究所には
地元大学出身者が比較的多かったようです。
特定の地域、特定の大学の影響が大きくなりすぎると、
研究所内の人材の多様性が失われ、
カルチャーが単一になり、その結果組織が硬直化して
知らず知らずのうちに創造性が失われていく恐れがあるのです。


■ 企業にも人材の多様性が不可欠

以前、ニューズウィーク誌の
「大学研究力ランキング」を紹介した際に、
「研究力が高く評価されている大学は
多様な人材を集めることに成功している」
という同誌の分析結果を紹介しました。
これは大学だけではなく、企業にも通じる話でしょう。
特に、創造性の発揮が強く求められる基礎研究所では、
多様性を維持することは不可欠なのです。


今回の武田の決断が良い結果を生むかどうかは、
10年ほどのスパンで見てみなければ分からないでしょうが、
少なくとも住み慣れた地域を離れ、
変革へと舵を切った武田薬品にエールを送りたいと思います。

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