2007年06月15日 07:40
国民投票法案 (財務/村藤)
■国民投票法の制定
最近、国民投票法案が
衆議院と参議院を通過しました。
日本国憲法には憲法改正には
国民投票が必要であると明記されているのですが、
憲法が施行された1947年から60年間、
日本の議会は国民投票法案を作らずに
さぼっていたことになります。
私は今財務を教えていますが、
法学部の出身です。30年頃前に
なぜ国民投票法案が出来ていないのかと
学生皆で騒いでいましたが、
それからまた30年経ってやっと
導入されたことになります。
財務と聞くと、関係ないように思いますが、
財務の重大な問題も本当は
国民投票で決めることが可能なので、
関係がないとはいえません。
■国民投票法の内容
今回の国民投票法は、
投票テーマを憲法改正に限定しています。
そのため、憲法9条の改正のことが
取り沙汰されていますね。
しかし本当は、民主主義の本旨からすれば、
投票テーマは憲法改正に限定する必要はありません。
実際に憲法改正以外の
重要な問題は山のようにあります。
例えば、道州制の導入、そして年金。
年金はすでに数百兆円分破綻していますから、
これまでのような賦課方式から、
自分で自分の年金を貯める積立方式に
変えることも考えられます。
健康保険や失業保険など、
今厚生労働省がやっているサービスを
全部民間に移す。それから税金を投入して
高速道路、橋や空港といったインフラを
作り続けることを辞めるなど、
これらを全部国民投票で決めて、
これに反することを官僚がやろうとすれば
国民が「コラッ」と言えばよい話だと思います。
国民投票制は、
制度の作り方によっては
本当に民主的なやり方になるのです。
国民が議員を選んでも、
その人全てを信じていることは普通ありません。
国会がいくつかの選択肢を提供して、
国民がその中からひとつを投票するという形でも
本当は民主主義のはずです。
その意味では、今回の国民投票法の
対象を憲法だけに限ること自体が、
私には国民を馬鹿にしているのではないかと思います。
重要な問題はもっと国民に決めさせてほしいと、
私は言いたいですね。
■国民投票法の手続き
憲法では、衆議院と参議院の両院で
議員の3分の2以上の賛成によって
国民投票にかけられること、
その上で国民が投票して
過半数の賛成が必要というところまで決めています。
しかし、これを実際に行うには、
もう少し細かい手続きが必要です。
そのため、今回の国民投票法が成立しました。
今回の法案で定められたことは、
衆参両院の3分の2の賛成で
国民投票に付された後、つまり
国民投票をやろうと言った後から
60日以上180日以内の範囲で
投票が行われることになっています。
また、投票のテーマは
1つではなく複数でも良く、
国民投票では18歳以上の国民が
テーマ毎にYESかNOかを言うことになりました。
けれども国民がYESとNOしか
言えないのは変な話で、先述のように
国民は選択しても良いと私は思います。
5つ位の選択肢を出して、国民がこれが良いと
選んでも良いはずです。しかし、
政府は国民を馬鹿にしているのか
YESとNOだけ言えということになっています。
■投票運動の制限 -有料広告や地位利用の禁止
そして国民投票の手続きの段階で、
テレビCMなどの有料広告や、
公務員や教職員の地位を利用した
投票の呼びかけの禁止も
今回の法案では決まっています。
お金を持っている有力候補だけが、
テレビやラジオなどのチャンネルで
大騒ぎするのは良くないし、
公平性に欠けるだろうということで禁止。
また、公務員が、「私が管轄している業界なのだから
私の言うことを聞きなさい」と言ったり、
教職員が「あなたは私の学生だから
先生の言うこと聞きなさい」と言ったり
するのも良くないので、これも禁止です。
■18歳以上の国民は投票できる
今回の国民投票法では、
18歳以上の国民が投票権者となっています。
これは、少子高齢化もあって重大な問題については、
将来の世代である若手の意見も聞こうという趣旨ですね。
すでに国民投票制度を設けている欧米でも
18歳からとしているところは多いです。
しかし、日本は公職選挙法で
選挙権年齢を20歳以上と定めていたり、
民法でも20歳未満の未成年であれば
親が子供のした法律行為を取り消せたりするなど、
いろいろなことが20歳で決められています。
そのほかにも、少年法や国民年金法。
これらのいくつかを20歳から18歳に
改正する必要があります。
3年後までに必要な法律が全て
改正される可能性もないわけではありませんが、
間に合わなければ、20歳以上で
国民投票を行うこともありえます。
■憲法改正のこれまでの流れ
国民投票法の制定は、
憲法改正を目的としていると言われていますが、
憲法は変える必要があるのでしょうか。
憲法が施行されて60年経ちますが、
部分的に変えようという人、
全面的に変えようという人さまざまです。
例えば、ある人たちが言うには、
そもそも今の憲法は占領期間中に
アメリカ中心で作ったもので、作り方に問題がある。
彼らに言わせれば、憲法の中身は問題でなく、
日本人が作らなければいけない。
だから、全面的に憲法を変える必要がある、
ということになります。
一方で、そうは言っても、良い憲法なのだから、
必要な部分だけ変えればいいじゃないかという人たちもいます。
特に憲法九条の二項では
戦力を持たないと言っていますが、
持たないと言っても自衛隊があります。
現実にあるものを無いと言っても
しようがないという話です。
そういう意味で、自民党も民主党も
協力して憲法を変えようと、
去年の2006年末には公明党も交えて、
大筋は合意していました。
これで、憲法の話は、政争の具には
使わないことになったのかと思っていたら、
突然安倍首相が
今国会で絶対に成立させるためには
民主党内の改憲派の顔を潰してもかまわない
と言い始めて、民主党の小沢さんとケンカになり、
自民党は賛成、民主党は反対ということになりました。
憲法改正のためには、
衆参両院で3分の2の賛成を得たあと
国民投票を行うことが必要となり、
今の状況では民主党の同意がないため、
憲法改正は当分できないといえるでしょう。
ただ国民投票法の施行は、
3年後の2010年以降の話ですから、
しばらく後にどんな状況になるかは分からないですね。