2007年06月27日 07:40
大学ブランドグッズ(産学連携マネジメント/高田)
■大学ブランドグッズに関するシンポジウム
先日、九州大学で『大学ブランドグッズ』に関する
シンポジウムが開催されました。
全国5大学から6事例が報告され、
活発なディスカッションが行われました。
具体的に事例紹介されたのは、
近畿大学の『クロマグロの完全養殖』、
新潟大学の『紙マルチで出来たお米でつくった日本酒』、
島根大学の『大学農場産サツマイモを利用した焼酎』、
東京大学の一連のブランドグッズ、
そして九大からは伊都キャンパス近隣の酒蔵と里山保全を目的に
連携して開発した日本酒『九州大吟醸』と、
耕作放棄地で育成した『九大ビーフ』でした。
いずれも、開発にあたってはいろんないきさつやドラマがあります。
■近畿大学のクロマグロの完全養殖
例えば、近畿大学の『クロマグロの完全養殖』は、
同大学が将来的な食糧危機や漁獲量の減少を見越して、
数々の魚の養殖に取り組む中で、1970年に始まりました。
近畿大学は、“完全養殖“を達成するまでに
30年以上もの歳月を費やしています。
完全養殖とは、産卵・孵化から稚魚の育成を経て、
最終的に4-5年かけて“一人前”のマグロに育てて出荷するという
サイクルを確立させるものです。
この間、多くの苦労を乗り越える必要がありました。
例えば、マグロは常に泳いでいないと酸素が欠乏して死んでしまいますが、
いけすの大きさをどのくらいにすればよいかも当初はわからなくて全滅したり、
皮膚が非常に弱いため手で触ると弱って死んでしまうので、
どうやって天然のマグロを傷つけずに捕獲するか方法を考える必要があったり、
稚魚を育成する過程でどうしても死んでしまうという問題の克服に11年間も費やしたりと、
たいへんな苦労の連続であったとのことでした。
このような大学の研究成果は、
最終的にきちんと社会に受入れられて初めて意義あるものとして認められるので、
これを見定めるために、完全養殖されたマグロを『大学ブランド』で市場に出し、
その結果を更に研究にフィードバックさせているというわけです。
■大学ブランドグッズの持つ意味
それぞれの事例報告をきいていると、
いろいろと面白いことが見えてきます。
例えば、ブランドグッズの開発に携わる場合、
大学の研究者(科学者)として科学技術に関する研究だけをやれば良いというものではなく、
「どこで、どうやって売るか」といった販売や品質管理のことまで考えなければなりません。
必然的に、研究者や関わっている学生の 視野は広くなります。
従来の大学の研究は、
もっぱら“学会”という閉じた世界だけを見る傾向が強かったのですが、
『大学ブランドグッズ』に関わる研究者は、
いわば“社会全体”と対話をしなければなりません。
つまり、『大学ブランドグッズ』は、従来の大学の研究教育のあり方に
ある意味で一石を投じる、とても重要な取り組みだと言えます。
そもそも、なぜ大学が
このような『ブランドグッズ』に取り組んでいるのでしょうか。
シンポジウムのパネルディスカッションでは、その理由として、
①大学の研究成果の社会普及の一環、
②学生に対する教育の一環、
③地域との結びつきの強化、
④社会に対する問題提起、
といった項目が挙げられていました。
■九州大吟醸
例えば『九州大吟醸』は、九大伊都キャンパス建設に伴い、
地域の自然環境を積極的に保全していこうという学生・教員が設立した
NPO法人が、地元の方々と一緒に里山づくりに取り組む中から生まれました。
酒蔵の方から「酒は水が命ですよ」と言われたことをきっかけに、特別な日本酒をつくり、
九州大学のマークをつけて販売し、
その売上げの5%が地域の里山づくり活動に還元されるという仕組みになっています。
この事例からは、大学という存在が
地域メカニズムの中にしっかりと組み込まれているという印象を強く受けます。
かつての大学は“象牙の塔”などと揶揄されることもありましたが、
近年の『大学ブランドグッズ』の増加は、
むしろ積極的に社会全体や地域との接点を増やし、
存在意義を示していこうとする大学が増えていることを示しているのでしょう。