2007年07月27日 07:40
地方財政健全化法 (企業財務/村藤)
以前、地方財政の現状について、
ご説明したことがありました(2007年5月18日分)が、
その地方財政の健全化に関する法律が
2007年6月16日に成立しました。
中央政府の財政については、
かなり大変であると以前から言っていましたが、
地方は大変なところと問題ないところの両方があります。
ただ、夕張問題でも明らかなとおり、
大変なところは本当に大変だということが
分かってしまいました。
そこで、危なくなったらイエローカードを、
もっと酷くなったらレッドカードを
出すようにしようと決定されたのです。
■財政健全化法とは
自治体の財務がどういう時に
早期健全化のためのイエローカードを出して、
どういう時にレッドカードを出すのか
という基準を決めた
「財政健全化法」という法律が成立したのです。
地方自治体でもそろそろ、これを見ながら、
うちは大丈夫なのかなということが
心配になってきている頃でしょう。
それに、住んでいる人達も、
自分の住んでいる市町村は
どうなのだろうかということが、
やはり気になっていると思います。
これまでは分からなかったけど、
やはりイエローカードだったとか、
イエローカードが出る前に
いきなりレッドカードが出てしまった
などという可能性もあるわけです。
しかしながら、
どういう数字だとイエローカードになって、
どういう数字だとレッドカードになるのか
という基準は、
総務省がまだ発表していません。
今年中には総務省が政令で定めて
発表すると言っていますので、
どうやって計算するかとか、
その数字はいくらかということが
ハッキリ出てくると思います。
しかしながら、出てくる前から、
ダメに決まっているとか、
かなり危ないと分かっている自治体も沢山あって、
それについてみんな心配しています。
朝日新聞や日経新聞などでも、
大体こんなものではないかなと、
予想しながら計算してしまったりしているので、
そういう意味ではかなり心配な自治体が
出てきているという状況です。
■財政健全化法の特徴
今回の法律がどのようなものかというと、
まず最初に、大丈夫かどうか
4つの指標を計算してみなさいということが来ます。
そして、その4つの指標を計算するにあたっては、
監査委員に審査して貰いなさいということになりました。
今までも、政令指定都市以上などでは
監査をしていたのですが、
今後は、地方財政について、
イエローカードだとか、
レッドカードを判断する指標を
監査委員がちゃんとチェックして、
正しく計算しているかどうか見てください
という話になりました。
これについて2つ基準があるのですが、
これがさきほど
イエローカードとレッドカードと言ったものです。
イエローカードの方は「早期健全化基準」といいます。
早めに健全化させるために、
危ないと思ったら早めに
こうやって健全化しますという計画を
自治体が自分で作り、
それが達成できれば、
健全化して良かったねという話になるわけです。
都道府県とか政令指定都市では、
自分のところで作ってから、
総務大臣に報告するのですが、
市町村では都道府県に報告することになりますので、
都道府県も自分の所だけではなく、
市町村の健全化についても
見なくてはいけないのです。
■レッドカードがもつ意味
レッドカードになりますと、
「財政再生計画」というものを、
やはり外から作るわけに行かないので、
自治体自身で作るのですが、
それに対して最終的に判断を下すのは
総務大臣になります。
自治体自身が作成した再生計画が
必ずしもOKであるとは限りません。
財政再生しなくてはならないような場合はむしろ、
予算を変更しなさいといって、
もっと税金を取りなさいとか、
手数料を取りなさいとか、
サービスを下げなさいとか、
かなり細かいところまで口出しされる
可能性が高くなります。
夕張市のような困ったところでは、
自治体の住民にとって、
これまでより高いお金を払わなければならなくなって、
さらに、サービスレベルも下がってしまうというように、
総務省が自治体に手を突っ込んできて、
こういうふうにして再生しなさいと
口を出すことになりそうです。
そういう意味では、自治体も住民も
レッドカードは嫌なのです。
総務省が自分でやるから、
自治体や住民は横にいて責任を取って我慢しなさい
というような話ですから。
イエローカードはまだ健全化できればいいとして、
レッドカードを出されるのは
本当に嫌なのです。
そういう意味では、どのくらいの数字になれば、
イエローカードになって、
どのくらいの数字になれば
レッドカードになるのかということを、
自治体としてはずっと見守っているという状況なのです。
■4つの比率とは
その4つの比率とは一体そもそも
なんなのかという事が問題です。
1つめは「実質赤字比率」という、
一般会計が赤字かどうかという基準があります。
それから2つめは、「連結実質赤字比率」といって、
自治体の一般会計だけではなくて、
水道や下水道をはじめとする公営企業を含めて
赤字か黒字かという比率があります。
3つめとして「実質公債費比率」があります。
お金を借りたら、
金利元本を返さなくてはなりません。
一般会計から、一般会計の有利子負債だけでなく
公営事業の有利子負債の金利元本の
支払いにあてなければならない金額が
どのくらいなのかということを、
この比率は見ることになっています。
4つめの「将来負担比率」という比率は、
非常に新しい比率です。
今まで自治体の財務というのはフローだけを見ており、
毎年どのくらい入ってきて、
どの位出て行くかというような比率ばかりでした。
それに対して、今度の「将来負担比率」というのは、
自治体の有利子負債、
すなわち借りているお金の残高がいくらなのかという
ストックを計算するようになっています。
自治体では、普通の行政のために借りているのではなくて、
水道だとか下水道みたいな、
公営企業会計のために借りているところもあります。
一般会計の地方債残高に加えて
公営企業会計の有利子負債の償還のために
一般会計が負担する金額を計算し、
普通の行政の規模である「標準財政規模」に対して、
どの位の将来負担をしなくてはいけないかを見るので
「将来負担比率」というわけです。
但し、民間企業の考えるような連結有利子負債ではなく、
あくまで一般会計の将来負担を計算する特殊な定義ですから
計算に当たっては注意が必要です。
■今回の法律の眼目
この4つめの将来負担比率が実は、
イエローカードを判断する
早期健全化基準には含まれているのですが、
レッドカードを判断する
財政再生基準には含まれていません。
イエローカードは4つの基準で判断するのですが、
レッドカードは3つの基準で判断します。
どうして、将来負担比率を
財政再生基準から外しているのかというと、
実はかなり多くの自治体が
将来負担比率で引っかかる可能性があり、
下手にこれを再生基準に入れると
再生計画が必要になる自治体が
全国で山のように発生し、
総務省が対応不能に陥るからではないか
という疑いがあります。
そこまで徹底されていないのは、
正直言うと中途半端な印象をうけますが、
いずれにせよ、この法律によって
地方財政の現状が私たちの目に見えるように
示されることにはなるわけです。
これはある意味、公表するということが
1つの眼目であって、
夕張市みたいに、沢山借りているのに隠していたというような、
そういったまやかしは許さないということで
今回の法律が出てきたのです。