2007年08月22日 07:40
アジアの科学技術コミュニティにおける知財問題(産学連携マネジメント/高田)
先日、知財学会という学会で、
アジアの大学や公的研究機関における
知財問題について
ディスカッションする
セッションがありました。
プロ・パテントと呼ぶ
知的財産を重視する政策は
過去20年以上に渡って、
北米から欧州や日本への
影響力を強めてきました。
その動きは
アジア各国にも広がりつつあります。
このような状況で、
アジア各国の大学や公的研究機関は
それぞれどのような知財問題を抱えているのか、
そこには共通課題があるのかといった点について、
インド、ベトナム、韓国、中国、日本からの
スピーカーがそれぞれ現状報告を行ないました。
■ベトナムやインドの課題
ベトナムやインドに共通していたのは、
研究レベルの向上という課題でした。
つまり、発展途上国として
まだまだ日米欧の研究レベルには達しておらず、
有望な知財が多く生まれるには
時間がかかるだろうということでした。
同時に、大学や公的研究機関で生み出された知財を
活用する産業が十分に育っていないということも
課題として挙げられました。
例えば、ホーチミン工科大学では、
大学の研究者と地元企業との
産学連携活動は結構活発だといいます。
しかしながら、その多くは特許が取得されるようなレベルではなく、
ちょっとした技術指導やノウハウの移転が
ほとんどということでした。
■韓国や中国の課題
一方、韓国や中国はかなり大学の
知財管理も組織的に行なわれるように
なってきています。
それでも、中国では、
大学の研究者が
大学で得られた研究成果をもとに
個人的にベンチャー会社を設立して
金を稼ぐことが頻繁に行なわれており、
大学の研究者とベンチャーの社長との
境目がかなり曖昧です。
中国では、産学連携というよりは
産学同体と表現するほうが適切なくらい、
大学の研究者とビジネスとが一体化する
場合も多いといいます。
このような状態は、
ヘタをすると深刻な利益相反問題を
引き起こす可能性もあります。
例えば、大学で得た学術研究成果であっても、
ベンチャービジネスに不利なデータが開示されないなどです。
これでは、大学そのものの信頼が
大きく揺らいでしまいます。
産学連携を適切に進めるうえでは、
利益相反のマネジメントは欠かすことは出来ません。
■日本の課題
日本からの報告では、
産学連携は制度面では
ある程度充実してきたけれど、
実務を担う人材が
依然として十分に育っていないという
問題点が指摘されました。
これは、ある意味では
成長のプロセスには
起こりがちなことであるといえます。
■今後の日本のアジアでの研究交流
今後は、日本の大学もアジア各国との
研究交流が更に進むでしょう。
また、日本の企業もアジア各国に進出し、
現地の大学と産学連携プロジェクトを
走らせることももっと増えることは
想像に難くありません。
そのときに、お互いの国の知財や産学連携の制度について
ある程度の知識を持ち、
また人脈を形成しておくことによって
スムーズなコミュニケーションが図られ、
例えば共同研究を行なう際の契約や、
共同で特許を保有するときの管理方法などについて、
迅速に決めて契約を結ぶことも出来るようになります。
科学技術の発展を促すためには
研究者や技術者同士のコミュニティを形成するのみならず、
研究を支援する産学連携人材のレベルでも
コミュニティをしっかりと形成しておくことが不可欠と言えます。