2006年07月08日 15:15
省庁別財務書類 (村藤/財務)
今日は省庁別財務書類という、
各省庁の財務状況を示す書類の話をしたいと思います。
これは、政府の財務状況がどうなっているか
ということを見るために去年から作られ始めたものです。
政府は色々な行政サービスを行います。
その際、はたして財務は大丈夫なのだろうかということで、
政府の財務を把握しようという機運が高まり、
去年あたりから省庁別に
財務を公開するという動きが始まりました。
■ 「中央政府の省庁別連結財務諸表」の公開
省庁というと、国土交通省、総務省、厚生労働省、
あるいは財務省など、いろいろあるわけですが、
例えば国土交通省であれば政府単体だけでなく
傘下の特殊法人として道路公団や住宅公庫など、
総務省であれば郵政公社、
厚生労働省であれば年金などに関連する特別会計というものがあります。
行政の全体像は、一般会計だけでなく、
傘下の特殊法人や特別会計も含めた財務状況を
省庁別に把握しなければわかりません。
つまり、政府の財務を省庁別に連結で見せろということで
中央省庁の省庁別連結財務諸表の公開を始めたというわけです。
今回の省庁別財務書類は、
フローだけでなくストックを含む点で、
家計簿とは大きく異なります。
■ 一見237兆円の債務超過、実際は500兆円にのぼる
これまで政府や家計は
あまりバランスシートを作ってきませんでした。
しかし、政府も中央政府や地方自治体ごとに
バランスシートを作りはじめ、
去年からついに省庁別にバランスシートを作って
公開することになりました。
すると、中央政府の省庁別財務諸表を連結すると、
資産は1500兆円程度あるけれど、
負債が1760兆円で、
237兆円の債務超過に陥っていることが明らかとなったのです。
しかし、一見237兆円の債務超過ですが、
実際には不良資産や
年金債務の引当て不足なども考慮しなければなりませんから、
実際は500兆円程度の債務超過に陥っていると考えられます。
■ 政府の債務超過は問題なのか?
民間企業であれば、
債務超過というのは株主の価値がないわけですから、
困った状況であることは明らかです。
しかし政府の場合、債務超過は問題かと言われると
みなさんよく分からないのが普通です。
結論から言うと、
政府であっても債務超過は困った話に決まっています。
政府は一般会計という税収によって
行政サービスを行う主体です。
もし税収だけで行政サービスを行っていれば、
自己資金で支える資産が
どんどんインフラなどで積み上がるだけで、
借り入れなんてものは
存在しないこともありうるはずなのです。
■ どうして債務超過に陥ったのか?
それにも関わらず
なぜこれほど有利子負債があるかというと、
資金を借り入れて高速道路を造ったり
住宅ローンを貸し出したりしたからです。
行政サービスを行う為の資金を、
自己資金ではなく
借り入れで賄うということを行いすぎたので、
借り入れの方が資産より
大きくなってしまったということなのです。
■ 政府のインフラは本来自己資金で賄うべき
政府の持っているものというのは、
そのほとんどは国民としては無料で使いたいものでしょう。
海や山に遊びに行ったり公園を使ったりする際、
一般に国民はお金を使う気はないでしょうから、
国民感情としてはこういったインフラについては
全て自己資金で賄って欲しいところです。
政府の供給するインフラの中には、
高速道路の料金のように
キャッシュフローが入ってくるものもあります。
そういうものに対しては
少々借り入れを行っても構いませんが、
その場合であっても借り入れは
見込めるキャッシュフローで
返済できるくらいの金額を限度とすべきです。
しかし、現実には政府にはたくさんの借り入れがあります。
のみならず、既述のように
資産を超えて債務超過にすら陥っている状況なのです。
債務超過をなくすだけで
500兆円以上の有利子負債の返済が必要ですから、
債務超過をなくすだけでなく
有利子負債がわずかで
自己資本がほとんどであるという政府にとって
最適な資本構成になるまでもっていくためには
500兆円プラス数百兆円の
有利子負債の削減が必要になります。
■ 国民1人あたり1,000万円程度の負担に
借り入れを行うかどうかを
若い世代に聞いたわけではなく、
先輩の世代が勝手に借り入れをして
行政サービスを行ったのです。
しかし、引退したら問題を若い世代に押しつけて
後は任せたと言っているようなものです。
そんなものをはたして
若い世代が返していかなければならないのかと、
疑問を感じずにはいられない話ですね。
500兆円ということは、
単純計算で国民1人当たりの負担額が
500万円ということになります。
以前、1兆円を1億人で割ると万円だ
という話をしたと思いますが、
500兆円だとすると、
兆を1億人で割りますから
1人当たり500万円となります。
先ほど述べたように、
500万円返してやっと債務超過がなくなるだけです。
資産を支える資本構成に仮に
自己資金が500兆円くらいは無ければならないとすれば、
減らさなければならない有利子負債は
500兆円+500兆円で1000兆円になり、
国民一人当たりの負担は1000万円になります。
■ たちゆかなくなる前に民間を活用した抜本的解決を
仮に債務超過が500兆円で、
最適資本構成に自己資金が500兆円必要だとすれば、
削減しなければならない政府の有利子負債は1000兆円で、
国民1人あたり1千万円程度
返さなければならないことになります。
これから人口が減少し、
さらなる少子高齢者社会へと移行していくことを考えると、
日本の中央政府の財務は悪化する一方だと考えられます。
我国の年金、医療、介護などは、
現在の働き手が高齢者を支えるという
社会福祉制度になっています。
さらに財務が悪化することを考えると、
行政サービスはとうてい維持していけなくなるわけで、
若者は頑張る力を失い、
社会は破綻するということにもなりかねません。
そうならないうちに、
政府が行っている現業を民間に移し、
民間で社会福祉サービスの負担も
一緒に行っていくということにしなければ、
問題の抜本的な解決は出来ないと考えます。