BBIQモーニングビジネススクール > 韓国、台湾、中国の電機メーカーの特徴と課題vol.1(国際企業戦略/永池克明)

2008年05月26日 08:00

韓国、台湾、中国の電機メーカーの特徴と課題vol.1(国際企業戦略/永池克明)

■韓国の電機メーカー「サムスン」
今日は東アジアの成長が著しい
電機メーカーの中からいくつかをピックアップしてご紹介します。
まずは韓国のサムスン電子です。
皆さんもよくご存知のメーカーだと思います。
サムスン電子は韓国最大の財閥である
サムスングループの中核企業です。
80年代になり急速に国際化を推進し、
また積極的な経営資源投入によって成長した企業です。


米国のビジネス雑誌フォーチュン誌が
毎年発表するフォーチュンランキングの電機企業部門では、
現在、ドイツ・シーメンス,米国ヒューレッドパッカード社(HP)に
次いでサムソン電子が第3位にランクされています。


70~80年代頃のサムソンは技術力がそれほど強くなく、
主として日本メーカーから技術を導入・吸収し、
それをベースに成長してきました。
その後80年代には、半導体メモリーを中心に
日本の有力な半導体メーカーから技術を導入し、
桁違いの設備投資を行うとともに、
日本メーカーから半導体開発技術者を
かなりの数で引き抜ぬくなどしてさらに強くなっていきました。


一方その頃の日本メーカーは、
日米通商摩擦の激化で米国政府から半導体対米輸出に
制限を加えられ、輸出が思うにまかせなくなりました。
また、日本の半導体メーカーは多くの事業分野を
手掛ける総合型電機メーカーが多く、
半導体部門だけに経営資源を投入することが難しい状況でした。
また、日本メーカーは次世代半導体に目を向けがちで
投資のタイミングを誤ることも多く出ました。
サムスン電子は日本メーカーが設備投資に
もたついている間に巨額の投資を行い
DRAM(随時書き込み読み出しメモリー半導体)分野で
一気に日本メーカーを追い抜いて行きました。


■サムスンの戦略
では、サムスンの急成長にはどのような戦略があったのでしょうか。
ひとつは、トップ・マネジメントのリーダーシップです。
韓国企業の多くは同族経営で、オーナー経営者が
強大な権力を持っています。
サムソンでは、イゴンヒ(李健キ)方ですが、
この人が非常に優れた経営者といわれています。
カリスマ性があって、経営的なセンスも非常にいい人です。
この人の鶴の一声、いわばトップ・ダウンの経営が
サムスン電子の成長を支えていたと言えます。
第2は、自社ブランドを貫いてきたことです。
これは後で触れますが、台湾のメーカーとは非常に対照的です。
第3には、マイケル・ポーターの競争戦略的で言えば、
最初は「コスト・リーダーシップ」という戦略をとったことです。
韓国は、欧米や日本に比べて賃金などのコストが相対的に安い。
これを武器に徹底した大量生産で規模の利益を追求し、
価格を安くして、コスト勝負でDRAMのシェアを伸ばしていきました。


そして、その後は、「集中戦略」を徹底させ、
経営資源を思い切って3つの分野に集中しました。
半導体メモリーと、携帯電話、
それにフラットパネル(液晶分野)です。
これがサムスンの飛躍に大きく貢献しました。
つまり、競争のための事業戦略が
大変明確であった事がサムスン電子の
成功のカギと言えるでしょう。
また、人事面では、優秀な人材を大量に採用し、
徹底した能力主義・成果主義による厳しい選別と
競争によって互人材を育成し、
早い時期に経営幹部候補を決め登用、
活用していることも経営の特徴の一つです。


■サムスンの課題
ではサムスンに死角や課題はないのでしょうか。
もちろんあります。一つは技術開発力です。
サムスンは、近年技術開発面にも力を入れています。
しかしまだこの面では本当の意味のトップ、
世界のリーダーという所までは行っていません。
例えば、この前も話題になりましたが、
次世代の液晶DVDで世界の業界を2つに分けた
ブルーレイディスクとHD-DVDのように、
世界の業界標準を争うような場面に
「サムソン方式」というようなものが
出てくるまでには至っていません。


サムソンは、先進国企業が開発した
既存の技術の延長線上の分野に思い切った
資源投入を行い、シェアをあげることが出来ました。
しかし、世界の業界標準を導くような技術開発力は持てずにいます。
シェアで世界のトップの一角に上り詰めた今、
本来は世界の業界標準となるような
技術開発力が必要になるのですが、
まだそこまでは追いつけていません。
事実、サムスン電子は2004年までは
日の出の勢いでシェアを伸ばしましたが、
2005年以降は半導体のメモリー、携帯電話、
そして液晶薄型パネルのいずれも
世界シェアが下がってきているのはこのためです。


現在、会長のイゴンヒさんは相当苛立っていて、
彼の言葉を引用すれば
「このままだとサムスン電子はサンドイッチになる」
と言っています。これはイゴンヒさんの表現なのですが、
「うかうかすると日本メーカーと再び技術の格差が開き、
一方で、目下韓国を猛烈に追い上げている
中国メーカーの攻勢の間で挟み撃ちになってしまう」
ということを危惧して、社員に発破をかけています。
確かに、ここにきて、日本メーカーは
自分が強みとする特定の強い分野にこれまでにない
思い切った資源投入をしています。
この1,2年で、サムスンを逆転するんだということを
合い言葉にして、巻き返しにやっきです。
そういう意味で、サムスンは非常に危機感を持っています。
中国の電機メーカーも急速にキャッチアップをしています。
ある韓国の調査機関によると、
韓国と中国の技術的な差はおよそ
3、4年位まで縮まっていると報告されていて、
これも韓国の危機感を引き起こしているといえます


最後に、サムスンの課題として相続問題と
それに絡んだ脱税問題があります。
これは本年(2008)4月18日、
サムスンの総帥であるイゴンヒ会長が在宅起訴されました。
一つは脱税容疑、もう一つは隠し資金を使って
政府関係にロビー活動したというようなことです。
韓国メーカーは、同族経営が普通であり、
それの存続に日本では考えられない程に強い執着を持っています。
それを懸命に守ろうとして、自分の息子である
後継者にそれを託す為に、
不正を行っていたことが発覚したわけです。
例えば脱税工作や、不正なホールディングカンパニーを
使って不当に安い社債を発行するなどして、
相続を有利にしようとしていたようです。


今回の事件によってイ・ゴンヒ会長は会長を
辞任するとともにそれを支えた司令塔戦略企画室も廃止されました。
今後は、同族ではない専門経営者たちの集団指導制となります。
このことは、これまでの会長の素早い決断や思い切った資源投入が
今までのようにはいかなくなることを意味します。
ガバナンスの面では今後、サムスンが近代的な経営に
脱皮できるかどうか、経営の透明性を確保できるか。
そういう点も問われていると言えます。

韓国、台湾、中国の電機メーカーの特徴と課題vol.1(国際企業戦略/永池克明)MP3ダウンロード

前の記事へ 次の記事へ


ブログ&ポッドキャスト検索

ページの先頭へ戻る