2006年08月07日 08:20
モーダル・シフト 環境に優しい輸送 (ロジスティクス/星野)
■モーダルシフトとは何か
輸送機関のことを輸送モードと言いますが,
これをシフトさせる,つまり切り替えることを「モードシフト」といいます。
モーダルシフトは,もともとエネルギー問題や環境負荷の軽減,
労働力不足に対応した取り組みでした。
最近,ガソリンの価格が高騰してドライバーには大きな負担かと思いますが,
恒常的に高値が持続するとトラック輸送にとっては大きな打撃です。
輸送コストは,間接的に物価にも影響を与えますので,最近では
トラック輸送から船舶や鉄道などの大量輸送機関に
貨物輸送を切り替える「モーダルシフト」が進みつつあります。
■モーダルシフトの背景
トラック輸送から船舶や鉄道に切り替えるモーダルシフトの長所は,
効率的なエネルギー利用を可能にし,排気ガスの問題,渋滞緩和への対策が
出来るということがあります。
例えば,トラックが船舶や鉄道と同じ量の貨物を輸送するとき,
トラックが排出するCO2(二酸化炭素)の量は,
鉄道の7倍,フェリー,船などの2倍になります。
また,少子高齢化に伴いトラックドライバーの労働力不足や
ドライバーの負担軽減が求められるようになりました。
労働力においてはどんな長所があるのでしょうか。
例えば,16両編成の貨物列車を使うと,560トンの貨物を運ぶことができます。
これを10トントラックに換算すると56台分。
最低56人のドライバーを必要とする貨物を,1編成の貨物列車で輸送できることになります。
最近は,道路交通法が改正されて放置駐車違反が非常に厳格になり,
宅配便のトラックでさえもドライバーの隣の助手席に
人が座っています。こういった人手不足も解決できるかと思います。
■急速に進展する大量輸送機関へのモーダルシフト-
このような大量輸送機関へのモーダルシフトの考えは
1981年頃から当時の運輸省の政策審議会で提唱され,
90年頃から推進が表明されてきました。
しかし,実際にはあまり定着しませんでした。
その理由は,それ以上にトラック輸送の需要の延びが大きかったからです。
ところが,現在の石油価格の恒常的な高値,トラックドライバーの労働力不足が
問題視されるようになり,トラック輸送の見直しが緊急度の高い課題となっています。
つまり,これまではなかなか進まなかった
モーダルシフトが,急速に進展する環境ができつつあるといえます。
■佐川急便の例 ―トラック輸送と鉄道輸送の組み合わせ―
ここではモーダルシフトを行っている佐川急便の例を紹介します。
佐川急便はJR貨物と共同しながら, 長距離輸送の部分は列車で,
貨物のターミナルから最終目的地まではトラック輸送でという取り組みをされています。
昨年度の佐川急便の環境社会報告書によれば,2004年の1年間に10トントラックに換算して
7万4643台のトラックを削減したそうです。
これをCO2に換算すると6万8千トンのCO2の排出の削減に相当するそうです。
この佐川急便の例は,長距離に強く効率的な鉄道と,家の玄関まで
持ってきてくれるドアtoドアが強みのトラックをうまく組み合わせているともいえますね。
■福岡のイエローバードの例
また輸送の効率化ということで, 福岡での先駆的な取り組みもご紹介します。
天神で買い物をしている時に,イエローバードと言う文字とダチョウのような
不思議な絵のトラックを見たことがありませんか。
あれは天神共同輸送という名称で35社のトラック企業などが行っている
共同輸送の取り組みです。(天神地区共同輸送株式会社)
天神地区には3500社と言われるデパート,お店,企業があります。
従来はそれぞれの会社がそれぞれ契約するトラックで輸送していましたが,
狭い地域で駐車スペースはなく,大渋滞の原因にもなっていました。
そこで,1980年代の後半からそれぞれの会社が
共同で,イエローバードと言うトラックを仕立てて配送することを始めました。
実際にこれによってトラックの走行距離が以前の7分の1に減りました。
さらに交通量の減少や排気ガスの大幅削減に大きな効果があるといえます。
これまでは宅配便の利用にしても便利さが全てにおいて優先されてきましたが,
これからは環境に配慮した共生という考え方も本当に重要だと思います。