2009年08月06日 10:00
中台経済関係緊密化といわゆる「チャイワン」について (中国の経済と産業/国吉澄夫)
■ 中国企業、台湾に急接近
以前このコーナーで、
中国の標準化やデジタルテレビのことをお話ししました。
その時、中国側の推進責任者として、
中国情報産業部の白為民さん
という女性の名前を挙げたたことがありますが、
先日の日経新聞に彼女の写真が載っていました。
「中国企業、台湾に急接近」という見出しで、
中国のテレビメーカー数社よりなる
液晶パネル買付け団を引き連れて台湾を訪問した
中国の業界団体副会長としての彼女の活躍ぶりでした。
中台関係は、国民党の馬英九政権が誕生して1年で、
「通信」「通航」「通商」の三つの直接化が実現し、
関係良好化が進んでいます。
その過程で、国際金融危機を共同で乗り越えようと、
昨年12月「台湾海峡両岸経済貿易文化フォーラム」が開催され、
両岸の産業協力として、
液晶テレビや携帯電話での協力など
10項目の政策が打ち出されたのですが、
その一つに、国際金融危機で窮地に陥っている
台湾の液晶メーカーから、
中国のテレビメーカー9社が一括して液晶パネルを買い付ける
という計画が発表されました。
今回、6月にその企業代表団が台湾を訪問、
総額3200億円相当の購入契約に至ったものです。
■ 「チャイワン」という言葉
こうした台湾企業と中国企業との蜜月ぶりを、
不況を背景に、焦燥感を持って眺めている韓国企業、
韓国メディアから出た言葉で、
中国(チャイナ)と台湾(タイワン)の頭をもじった
「チャイワン」と言う造語が流行しています。
2007年夏ごろから韓国紙・朝鮮日報などの
メディアにしばしば登場するようになったようです。
韓国ではそれ以外にも、
価格競争力のある
中国企業と技術力のある日本企業の間に挟まれた
身動きの出来ない韓国企業の置かれた立場を
「ナッツクラッカー」と表現するようです。
いずれにせよ、
液晶パネルやメモリーICといった
韓国企業が得意とするエレクトロニクスの分野で、
この1年台湾企業にシェアーを奪われていることは事実で、
韓国企業に深刻な脅威を与えています。
液晶パネルを例に取ると、
2008年1~3月の中国市場でのシェアーが、
韓国46%、台湾38%だったものが、
2009年1~3月では、台湾57%、韓国30%と逆転しています。
■ 台湾経済にとっての中国
台湾経済にとっての大陸中国は非常に大きい存在です。
貿易取引先としては、日本、米国を抜いて第1位ですし、
投資でも2007年で累計3.6万件、
投資残高618億ドルと言われていますので、
これは、日本からの対中投資とほぼ同じ規模です。
台湾の人口2300万人ということを考えれば如何に大きいか推測できます。
ちなみに、中国で働く台湾人は100万人といわれ、
日本人の12万人に比べて8倍以上です。
台湾からの対中国大陸投資は、
80年代から90年代にかけて、広東省の珠江デルタ地域に軽工業、
或いは電子工業で進出し始めましたが、
2000年以降は江蘇省を中心とする
長江デルタ地域にノートパソコンや半導体を中心に
ハイテク製品で大規模進出を図り、
この地域が「世界の工場」と言われるのに大きな役割を果たしてきました。
現在はこうした技術集約産業の進出先が北京・天津地域や東北三省、
さらに西部地域にも及んでおり、
同じく、1990年代後半から山東省や長江デルタ地域を中心に
中国進出を加速してきた韓国勢と市場でぶつかってきているわけです。
また、ここにきて、さらに中台関係の一層の発展を促す出来事として、
台湾側が7月初め、中国企業の台湾への直接投資解禁を発表しました。
これによって、デジタル家電などの分野で、
中台企業の連携が益々加速されると予測され、
東アジア領域での、国際分業や企業間提携に
大きな変動が起こるものと思われます。
国際金融危機の影響で、
大きなダメージを受けた日本企業が、
事業リストラに手を取られて縮こまっている間に、
東アジアの趨勢が大きく変わりつつあるのが気がかりです。