2006年09月06日 14:00
製品アーキテクチャ」と日中企業の強みについて (中国ビジネス/永池克明)
今日は製品アーキテクチャという,
少し堅いテーマについてお話します。
まず,アーキテクチャ(Architecture)とは,
もともと「全体の枠組み」とか「構造」,「構成」,
「建築物」などという概念ですが,経営工学的には
「ハードウエアまたはソフトウエアの基本設計概念」を指します。
この番組では,これまでにも何度か
中国の製造業の強みや弱みなどを説明してきましたが,
今日は総まとめとして,やや理論的な側面から
日本と中国の特徴について浮き彫りにしたいと思います。
■商品と製品を「ハード」と「ソフト」で考える
まず一般的な商品とか製品を少し理屈っぽく
説明してみます。例えば自動車や家電品のような
ハードウェアの場合,いろいろなアイディアや情報を設計図に落とし込みます。
自動車の場合,設計図に基づいて金型をつくり,
それに基づいて成型機を通して薄い板を成形し,車を作っていきます。
一方,目に見えないソフトウェアやサービスのような製品の場合
例えば「中村もときの通勤ラジオ」もそうですが
中村さんや有識者の経験,情報やノウハウを設計し,
メディアに転写して世の中に発信していく
一種の商品や製品といえますね。
■製品アーキテクチャとは
もう少し商品というものを詳しく説明してみます。
例えばハードウェアで言えば,製品の最も重要な機能を
左右する部品を「中核部品技術」とか「コア部品技術」と言います。
自動車で言えばエンジン,コンピュータで言えば
CPU(中央演算処理装置),OS,基本ソフト。
こういった部品をどのように連結するか,ということに
関する基本コンセプトを「製品アーキテクチャ」と言います。
製品が要求する機能をどのように展開し,
どのように部品を切り分け,機能を配分し,
部品間の接合部品(インターフェース)をどう設計するかに
関するルールがアーキテクチャの選択によって決まってきます。
■インテグラル型とモジュラー型のアーキテクチャ
この製品アーキテクチャには大きく分けて二つあります。
一つのタイプは部品を相互に細かく調整して,
隙間無く組み上げていかないと全体としてうまく機能しないタイプ。
これをインテグラル型,摺り合わせ型と言いますが,
自動車はその典型例です。自動車の90%以上の部品は,
その企業グループでしか通用しない特殊設計部品です。
そこでは日本の熟練技術が十分に生かされます。
一方、もう一つのタイプは,
一般の汎用部品の寄せ集めでもそれらを組み立てれば
まともに機能するような製品。これはモジュラー型,
組み合わせ型と言われています。
例えばデスクトップパソコンや,自転車などのようなものです。
部品をあちらこちらから寄せ集めて組み立てても,
比較的容易に商品として使えます。
このような製品をモジュラー型と呼んでいます。
■日本は摺り合わせ型製品,中国は組み合せ型製品に強い
最近では,グローバル化によって
世界各地への輸送手段が発達し、IT技術や
インターネットの発達によって,デジタル化が進み,
いろいろな機能が簡単にデジタル化され,
素材に転写されて安いコストで世界中に送られるようになりました。
この結果,こうした情報が世界中に共有されます。
この結果,モジュラー型,つまり組み合わせ型製品が増えていきます。
例えば欧米企業は,どちらかといえば
組み合わせ型(モジュラー型)の製品に強く,
製品の開発や設計は自社で行うけれども,
部品は世界中からアウトソーシングし,
組立てはコストの一番安い国で組み立てて,
製品を市場に出していきます。
中国は,安い労働コストを武器にして,
こういった組み合わせ型(モジュラー型)製品の
組み立ての部分に強みをもっています。
デル・コンピュータやIBMのパソコンなどは
製品の75%がアウトソーシングに依存しています。
一方,日本のモノづくりは昔から伝統的な熟練技術者が多く,
そういう人達が手に持った技術,長年培った技術で
摺り合わせをしながら製品を組み立てていく
自動車や精密機械のように特殊設計部品を細かく
隙間無く擦り合わせて組み立てていくような,
摺り合わせ型(インテグラル型)の製品に強いわけです
■海外に出せるものと出せないものを考える
つまり、中国と日本とでは
ものづくりのアーキテクチャが違うのです。
今後は,その違いをうまく組み合わせて,
中国と日本が相互補完関係をつくっていけば
全体として共存共栄ができるのではないかと思います。
しかしそうは言っても,この前ウサギとカメの話をしましたが,
中国も一生懸命に技術を磨こうとしています。
日本としては,製品や技術の特性を十分に吟味し,
「どの製品や部品を日本で作り,どの製品を海外に出すか」や,
「技術が新しいか古いか」,「中国に出してよい技術と出せない技術」
ということを戦略的に考えて対処していくべきと考えます。
また,コア部品を作る技術や真似のしにくい製品,
「ブラック・ボックス化」を考えていくこと,
常に一歩先をいく技術革新や新製品開発努力を怠らないことが大事だと思います。