2006年09月11日 08:20
グローバルに展開する企業の脅威と機会 (国際経営/星野)
■企業経営にとっての逆風と追い風
今日はグローバルに活動する
企業の脅威と機会というキーワードを取り上げてお話しいたします。
企業経営には、様々な脅威と機会が取り巻いています。
例えば,ある日突然,企業や業界にとって
脅威と考えられる逆風が吹き始めます。
そのような環境変化に対して適切な戦略を取ることが
出来ない企業は、その存続すら危ぶまれることになります。
最近であれば石油の価格の高騰は,
様々な業界や企業に影響を及ぼしていると思います。
また英国の航空機テロの未遂は,航空機産業や航空会社,
観光業にとって大変な痛手だと思います。
これと同じようにいろいろな国の政策の変更も,
グローバルに展開する企業にとっては大きな脅威になり得ます。
一方で環境の変化に対していち早く対応することで,
大きなビジネス・チャンスを呼び込むことも可能です。
これは機会ということになりますし,別の言い方をすると追い風ともいえます。
■EUのCO2排出量規制は自動車メーカーの逆風なのか、追い風なのか?
最近の日本の自動車メーカーの動向を見ていて,
この脅威と機会ということを強く感じます。
EUでは2008年までに新車のCO2の排出量を
1995年より25%削減することを政策として打ち出しています。
2009年から対象となる日本の自動車メーカーは,
この規制をクリアし,ヨーロッパでの低燃費車の導入に
成功しないと市場を失うことになります。
大きな脅威と考えられ,この政策に向けて各社は,
燃費のいいディーゼル車やハイブリット車の導入が検討されていると思います。
一方で、この状況である企業は成功して,
他のメーカーがもし規制をクリア出来ず失敗すれば,
成功した企業にとって大変なチャンスになります。
■アメリカで選ばれた日本のハイブリット車
同じように,アメリカのカルフォルニア州で,
昨年の8月に新しい法案が可決されました。
これは,燃費のいい先進的な車両は,
フリーウェイの優先通行レーンを運転することを認める法案です。
優先通行レーンというのは,本来2名から3名の乗車している車のみ
通行が認められていて,昔からHOV(High Occupancy Vehicle)とか,
カー・プール・レーンと呼ばれていました。
特に朝晩の渋滞時には,比較的スムーズに
通行出来るレーンということで,通勤者の羨望の的です
カルフォルニア州の上院では,1ガロン45キロ以上の
基準値以上に燃費の良い車の優先通行を認めました。
これは日本に置き換えると1リットル19キロ以上走れる車を意味します。
その結果,優先通行レーンの対象になった車は,
トヨタのプリウス,ホンダのシビックとインサイトという3車種のハイブリット車だけでした。
対象車が日本車の3車種だけだったことに,
アメリカの自動車メーカーが反発し,日本車を優遇することの批判がされました。
しかし、実際にこの基準をクリア出来た車は,
これらの3車種だけだったわけですから,何ら説得力を持たないのですが。
■逆風を追い風にするためには?
これに関して非常に感慨深いのが,
かつて1970年に制定された大気汚染防止の為の
マスキー法という法律です。比較的日本でもよく知られている法律ですが,
当時世界で最も厳しい排ガス規制を自動車メーカーに課そうとしたわけです。
この規制は,当時の自動車大国のアメリカのメーカーだけが
クリア出来るかと思われていましたが,
実際に厳しい規制をクリア出来たのは
ホンダのCVCCエンジンだけだったことはよく知られています。
実際には,この法案は自動車メーカーの猛反発と
政府への働きかけがあり,実施されることなく廃案になりました。
もし実施されていたらホンダのCVCCエンジンを
積んだ自動車だけが、大きな機会を得ていたはずです。
今,日本の自動車メーカーは
低燃費の車の開発に取り組んでいますが,
それは石油価格の高騰,あるいはEUの規制という
本来は自動車産業にとっての逆風の中で,
非常に大きな追い風となりつつあるわけです。
何かにつけて誰もが「環境が悪い」と嘆く中で,
自らいち早く環境変化に対応することで,勝者に成り得るということですね。
それは企業でも個人でも同じだと思います。