2006年09月21日 08:20
九大発 高齢者の失明を克服するベンチャー (産学連携/高田)
九大眼科出身の若い医師が、お年寄りの失明につながる病気を
治療する薬を開発するために、昨年ベンチャー企業を設立しました。
今日はこのお話をしていきたいと思います。
■ アキュメン・バイオファーマ
この会社は「アキュメン・バイオファーマ」といいます。
これまで順調に成長し、ベンチャーキャピタルや
金融機関から4億円を越える投資を受けて、
薬の開発に取り組んでいます。
現在開発中なものはいくつかありますが、
大きなものとしては加齢黄斑変成症や
糖尿病性網膜症という病気の治療薬が挙げられます。
この病気は、高齢になって網膜の血管が異常な成長をすることによって、
徐々に視界が狭まり、最終的には失明に至るというもので、
失明原因のトップ となっているものです。
米国では1,600万人がこの病気にかかっており、
ベビーブーマー(団塊の世代)が高齢化する
今後5~10年の間に、患者は2倍に増えると予測されています。
2年前、九大眼科の先生がこの病気を抑える作用を持つ物質を発見したのですが、
このことをきっかけに、「孫の顔が見たい」という高齢者の願いに応えるべく、
九大眼科の若い医師である鍵本氏がベンチャーを設立したというわけです。
このベンチャーは、他にない特徴をいくつか持っています。
■ 若い人材による機動的な経営
1つは、鍵本氏をはじめとした 若い人材が中心となって
会社を切り盛り していることです。
医薬品開発は技術開発そのものが非常に高度です。
また、臨床治験で実際の患者さんに少しずつ投与しながら
薬の安全性や効果を確認したり、最終的に厚生労働省の承認を得たり、
といったことで社会的責任が重く、高度な経営手腕が求められます。
そのため、その道の専門家しか経営出来ない
というイメージで捉えられていました。
しかし、鍵本氏をはじめとした若い人材が、
医薬品メーカー出身者やベンチャーキャピタルなど
経験豊富な専門家の意見を柔軟に取り入れながら、
機動的な経営を行っているのです。
シリコンバレーのスタンフォード大学で長くベンチャー育成に関わってこられた
ビル・ミラー先生という方がおられます。この先生が先日、九州大学での講演で
次のようなことをおっしゃっていました。
「ベンチャーの成功要因で最も重要なのは、経営者の柔軟性、つまり、
他人のアドバイスに素直に耳を傾け、軌道修正の必要があれば迅速に変える、
というアクションがとれるかどうか、ということだ。」
■ グローバルな視点による開発
もう一つの特徴は、 グローバルな視点 を持って開発に取り組んでいるということです。
医薬品は、何も日本だけで売れればよいと言うものではありません。たとえば、
現在開発中の治療薬を必要としている患者はむしろ米国やヨーロッパの方が圧倒的に多いのです。
アキュメン・バイオファーマでは、日本だけではなく 米国で臨床治験を行う準備 を進めており、
先行して開発している手術補助剤については、既に審査機関であるFDA(日本の厚労省に相当)と
交渉を開始しています。
場合によっては日米同時発売といったことも実現するかも知れませんね。
彼らは、世界中を俯瞰して経営資源を探索し、どうすれば一番早く開発出来るか
ということを考慮しながら経営を行っています。
福岡からスタートしたアキュメン・バイオファーマが、世界レベルで戦える企業として成長し、
一日も早く患者さんに薬を届ける日が訪れることを期待しているところです。