2006年10月10日 08:20
自分が売っている商品は何か‐商品の定義‐(マーケティング/出頭)
■自分が売っている商品を「顧客の立場」から考える
前回、マーケティングを行う上での欠かせない3要素として、
以下3つをお話しました。
1 「商品は何か(What)」ー『商品の定義』
2 「誰に売るのか(who)」ー『顧客の特定』
3 「他の商品とどう違うのか(How)」ー『差別化のポイント』
そして、6㎜の鉄製の錐(きり)を売っている会社は、
「錐」を売っているのか、それとも「6㎜の穴」を売っているのか、
というところで終わっています。
これはどちらが正しいとか間違っている、ということではありません。
物理的に見れば6㎜の錐は錐ですが、お客さま側の視点に立つと
その錐に期待する効能や便益は「6㎜の穴」ということになります。
従って、売り手側の視点に立つか、
買い手側の視点に立ちその商品に期待する
効能や便益を見るかによって、商品の定義も変わってくるわけです。
同じことが口紅にも言えます。
物理的にはピンクの口紅ですが、お客さまは美しさや美を買っているでしょうし、
ビタミンCのサプリメントを買う若い女性は、美しい肌を買っていることになるかもしれません。
■百貨店や鉄道事業をどう定義するか
もう随分前の話ですが、
東京近郊にディズニーのテーマパークが出来た時、
百貨店の来店客数が激減したと言われています。
その当時の百貨店の事業主からすると、
百貨店は「高級小売店」と定義していたと思いますが、
お客さまにとっては「家族の娯楽センター」だったのかもしれません。
アメリカでは、貨物輸送の鉄道事業が、
長距離トラックに敗れて鉄道事業が廃れてしまうことがありました。
アメリカのあるマーケティング学者は、
その理由を事業主が自らを2本のレールと車両からなる「鉄道業」と
自分たちを硬直的に考えて、顧客側にたって
「人とものの移動手段」という定義が出来なかったからだと言っています。
このマーケティング学者は、
このように作り手の立場で物理的特性だけで商品の定義を考えることを
「近視眼的マーケティング」と名付けました。
このように考えると、その商品の定義とは、
簡単のようで、やはり非常に重要で、
その商品のはやり廃りに大いに関わってくるということが分かります。
良い商品を持っていても近視眼的なマーケティングであれば、
時代についていけないともいえますね。
■会社のスローガンも「顧客の視点」へと変換
前々回に話しをしたと思いますが、
戦後60年の消費市場を大きく区切っていくと、
製造業が威勢のいい時代があり、流通が支配する時代へ、
そして消費者主権という時代が到来しました。
製造業が威勢のいい時代とは、基本的には需要過多で物が不足気味です。
そういう時代には、商品を作り手側の論理で、
単純にそして物理的に、錐は錐、口紅は口紅、
ビタミンCはビタミンCと定義してもさしたる問題はありませんでした。
しかし、物が溢れて供給過多になり、お客さまが自分の好みを言える時代、
つまり今の時代では、お客さま側の視点が不可欠になります。
そのため、多くの会社が
この十数年で企業スローガンを顧客視点のものに衣替えをしています。
複写機メーカーがドキュメントの会社と言い始めたり、
フィルムの会社が記憶とメモリーの会社へ、
コンサルティング会社がソリューションの会社へと定義を変えています。
これらは全て供給側の視点に立った定義から、
顧客視点に立った効能や便益に基づく定義への変換と言えます。
■「顧客の視点」による定義は時代とともに変わる
また、顧客側に立った定義をすれば
それで済むかといえばそうではありません。
顧客側に立った定義は時代と共に変わりますから。
そのため、時代と共に定義の再検討が必要になります。
例えばコンビニエンスストアは、
昔は「ご近所の冷蔵庫や鏡台代わり」として商品の定義をしていたと思います。
しかし今はATMを備え公共料金の支払いも可能となり、
「コミュニティーのサービスセンター」へと定義が変わってきています。
顧客視点に立った定義をしたあとも、
その定義を時代と共にしっかり見直していく必要があるということですね。
今日は商品の定義についてお話しました。
皆さん自分の商品の供給側の定義、物理的な定義ということはよくご存知です。
そこから視点を変えて、お客さま側から見ると何だろうかと考えてみる。
作り手側だけでなく、顧客から見たら何なのか。
これはマーケティング的な思考の大変重要な第一歩になります。
◇九州大学ビジネス・スクール 来年度4月入学生募集中 ◇
出願期間 2006年10月16日(月)~23日(月) * 願書はHPでダウンロード可
試験期間 2006年11月11日(土)・12日(日)
詳細URL http://www.en.kyushu-u.ac.jp/BS/