2006年08月14日 08:20
日本の航空機産業 YS11の退役とホンダの参入 (国際経営/星野)
■日本が開発した航空機の退役
戦後初めて日本が開発した航空機YS11は,
現在日本の空に4機飛んでいますが,
これが年末に全機退役することになっています。
この航空機は,機体的には十分に使用可能ではありますが,
衝突防止装置が装備されていない為,
航空法で飛行出来なくなります。とても残念ですね。
YS11が退役となると,
世界の大型の民間航空機市場というのは,
ヨーロッパの企業連合であるエアバス社と
アメリカのボーイング社に二分された感があり,
それは戦前に多くの優秀な航空機を生み出してきた
日本の航空機産業にとっては、非常に残念な話です。
しかし一方で良いニュースもあります。
■ホンダが航空機の生産と販売へ参入
先日,ホンダが
2つのエンジンを積んだ(双発エンジン)ビジネス・ジェット機の
販売をこの秋から開始することを発表しました。
ホンダは先週行われたF1のハンガリーグランプリで
優勝したことも聞かれますが,
優れたエンジン作りをコアコンピタンスしている会社ですから,
いよいよ航空機産業にその技術を持って参入するということになります。
■航空機開発のパートナーとしての日本企業
もうひとつの動きとして,
日本メーカーは完成機こそ作ってはいませんが,
ボーイング社の航空機開発に本格的にパートナーとして加わっています。
三菱重工,川崎重工,富士重工業などが
主翼,尾翼,胴体などの機体の重要な部分の開発に
関わっているだけでなく,東レが機体構造の
炭素繊維を提供するという非常に重要な役割を担当しています。
日本の重工業メーカーは,
今までもボーイング社やエアバス社の
航空機の生産に加わってきましたが,
いわゆる下請的な部品や半製品の供給に
留まっていたといえます。
例えば1982年に就航したボーイング767においては全体の15%,
ボーイング777は21%を日本企業が受託しています。
それが現在開発中のボーイング787という機体では、
生産分担比率で実に35%が日本の技術によることになります。
ボーイング787というのは
2008年に就航予定の中型の航空機で,
ドリームライナーという愛称がつけられていますが,
軽量で耐久性に優れた炭素繊維というものが大幅に使われています。
機体構造全体の50%を占める炭素繊維によって,
従来の航空機に比べて, 燃費が非常に良くなる,
居住空間が広がる,窓の面積が大幅に拡大される
ということが可能になるようです。
この新しい技術も日本企業の東レによるものです。
■航空機産業を支える日本の先端技術
これだけ日本の技術が進歩していながら,
どうして日本の航空機開発はYS11を作ったところで
終わってしまったのか。これは非常に難しい問題です。
例えばもし日本が航空機を作れたとして,
日本で航空機の生産を行ったとすれば,
米国から購入することが出来なくなり,
アメリカの日本に対する貿易赤字もますます広がる可能性があります。
貿易赤字の解消に向けて、
政府専用機をボーイング社から購入したこともありました。
そうなるとアメリカも日本が製造することを良しとしない,
といった政治的な問題もあります。
さらに既に市場は、欧米の二社で形成されていて,
参入の余地がないともいえます。
その中で,日本企業は完成機を作らずとも
着々と技術を蓄えてきたといえます。
例えば,エンジンについてはロールスロイス社,
あるいはアメリカのゼネラルエレクトロニクス社と提携しながら
日本の重工業メーカーが作っています。
タイヤはブリジストンが主脚,前脚など足回りのタイヤを供給し,
面白いところでは航空機の内装大手のジャムコという会社が,
ボーイング社の製造する航空機の
内装品(化粧室,厨房,トイレやコックピットのドアなど)を
一括して納めています。
航空機というのは,構造,素材,加工といった
エンジニアリングとエレクトニクスの集大成であり,
最先端の技術成果の結集です。
そのため,航空機の生産に参加することは
技術力を高めるだけでなく,その分野の波及効果を期待出来ると思います。
確かに完成機は日本製ではありませんが,
ボーイングの航空機というのは実は日本の最先端技術に
支えられており,全体の3分の1が日本製と思うととても面白いですよね。